こんにちは。しいまです。
今回は、「希望病棟」のひと口読書感想です。

美雨先生、今回も良かったです。
「希望病棟」の主人公は3人。
- 摩周湖先生(29歳 医師) 遺伝子研究が専門・父は大学教授で母は救命医のお嬢様
- 桜子ちゃん(16歳 高校2年生) 遺伝子薬の治験を受ける末期がん患者・孤児
- 貴子さん(36歳 代議士妻) 遺伝子薬の治験を受ける末期がん患者・元銀座キャバクラ嬢
摩周湖先生は洞察力が鋭く相手の気持ちを察するのが上手いのですが、口下手で周りに変に誤解されやすい先生です。
思ったことが上手く伝えられず、患者や家族を怒らせてしまうこともしばしば。
そんなある日、病院の中庭で聴診器を拾います。
この聴診器は、患者の心の声が聞こえたり患者が見た情景を見られたりする不思議な聴診器。
口下手な摩周湖先生は、この聴診器のおかげで自分の観察眼が正しかったことに自信を持ち、患者に対して感じたことをきちんと言葉にして相手に伝えられるようになります。
治験もうまくいき、退院した桜子ちゃんと貴子さんは、一回死んだと思って後悔しない生き方をしたいと思いつつも日常に押し流されていきます。
そんななか、桜子ちゃんの進学と自立((高校卒業後は児童養護施設から出なくてはいけません)が問題となります。
そこで貴子さんが桜子ちゃんにびっくりなアドバイスをします。
これは賛否両論だと思いますが、容赦なく現実問題をつきつけてきます。
でも、単に問題としてほったらかすのではなくて、「じゃあどうすれば少しは良くなるのか」というところがクローズアップされています。
著者の垣谷美雨さんは、わたしのなかでは「社会派小説家」です。
現代社会の問題に、小説で真っ向勝負しているところが素晴らしいです。
社会問題といっても、わたしたちにとって身近なことだったりします。
- 経済的に進学ができない
- シングルマザーの経済問題
- 無戸籍の問題
わたしも経済的な理由で第一志望を諦めました。
無戸籍の原因は、子供が産まれても出生届を出しておらず戸籍が作られていないことなどです。
なぜ出生届を出していないのかというと、DVなどで夫から逃げている間に子供を産んでそのまま出生届を出すと子供は暴力夫の戸籍になってしまうなど、のっぴきならない事情があるからです。
法律が時代に合っていないことも問題で、直近の法改正で少しは時代に沿ってきたけれど、まだまだだと思います。
物語のなかでいろんな問題を自分事として考えさせられるのですが、読後感はスッキリでちゃんと小説としても楽しめます。

後悔病棟は、摩周湖先生の先輩であるルミ子先生が不思議な聴診器を拾うお話で、こちらもおすすめです。