こんにちは。しいまです。
今回は、「縁結びカツサンド」のひと口読書感想です。

街の商店街の三代続くパン屋さんコテンに集うお客さんと、パン屋の若き三代目の和久さんの心温まるハートフルストーリーです。
おじいちゃんであるコテンの一代目は、息子にも孫にもパンのレシピを伝授せず、見て盗めというタイプ。
そのおじいちゃんも去年亡くなってしまったため、お店の名前である「コテン」の由来も誰も知らず仕舞い。
短編連作なので、1話でも1冊でも楽しめます。
1話ではパン屋を継ぐつもりになって間もない三代目の和久さんと、銀行の人事部にお勤めの理央さんのお話。
結婚を間近に控えた理央さんは実家暮らしだったのですが、結婚したあと家事ができないと困るでしょうという両親の意向で一人暮らしをさせられます。
初めての一人暮らしに選んだ場所はコテンの近く。
三代目の和久さんは自分が作るパンにまだ自信を持てず、毎回必ず二代目である父親の作るパンだけを選び抜く理央さんのことを不思議に思います。
レジに行くたびに不審なしぐさをする三代目の和久さんに、人事部で目を養っている理央さんはそのしぐさを見逃さず、どうしても気になってしつこく問いただします。
三代目の和久さんは素直に理央さんに、日によって担当するパンが違うのにいつも二代目が作ったパンを選ぶことと、違いがわかるなら教えてほしいと話します。
理央さんはただ食べたいパンを選んでいるだけなので理由は答えられず、この日から毎回レジでお話するようになります。
ある日、理央さんにもらった5円玉のお守りからインスピレーションをもらい、三代目はオリジナルのドーナツを作ります。
ドーナツはベーキングパウダーを使って膨らますタイプと、イーストを使って膨らますタイプがあって、三代目は迷いながら自分のドーナツを模索します。
そんななか、お店に「つぶれるよ、この店!なんだい、あのドーナツは!味に迷ってる!さっき買ったドーナツ、昨日とまるで味が違うじゃないか!」と派手な女性に怒鳴りこまれます。
実はこの女性はドーナツに目がない予約の取れない人気占い師なのですが、この言いたいことをスパッと言うのが読んでいてスッキリします。
占い師の魔縫(まほう)さんの娘の花ちゃん(小学生)のお話もあります。
お話ごとに三代目の和久さんが自分のパンを見つけていって、おじいちゃんである一代目の思い描いていたお客さんを大事にするパン屋に近づいていきます。
その過程が三代目側とお客さん側と両方から丁寧に書かれていて、お店って経営者だけのものでもないし、お客さんのものでもなくて、地域みんなの心のよりどころのような存在でもあるんですよね。

お話が4つ入っていて、どんどん人と人がつながっていく素敵な本でした。